「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」に対する意見表明

 

2020年(令和2年)7月1日

入管問題救援センター 木下洋一

 

 第7次出入国管理政策懇談会(法務大臣の私的懇談会)の下に設置された「収容・送還に関する専門部会」は、2020年6月19日、「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」を行いました。同提言書は同29日、同懇談会で了承され、今後は法務大臣に提出後、法務省出入国在留管理庁は本提言を踏まえて、出入国管理及び難民認定法の改正に着手することになります。

 本提言は今後の入管行政に大きな影響を及ぼすものと考えられるため、以下のとおり意見表明いたします。

 

1.入管行政の透明化と在留特別許可等の積極的運用を!

本提言では送還に応じない者や仮放免中に逃亡した者に対する罰則の創設が盛り込まれています。また、現行法上、難民申請中の者を送還することは一律に禁じられていますが、これを見直し、難民申請中でも送還が可能となるような一定の例外を設ける方策の検討も盛り込まれています。しかし、送還を拒んでいる外国人を罰則等によって締め付ける前に、まずはなぜ彼ら彼女らが送還を拒んでいるのかを考える必要があります。

そもそも送還を拒む外国人の多くは、少なくとも主観的には、本国に帰ることができない、あるいは日本にいなければならない正当な理由があると考えている一方で、それを審査する行政(入管)の側には広範な裁量権があるとされています。ところが、入管行政は実質的に行政手続法の外側に置かれ、多くの場合、審査や処分に係る基準作りも、不利益処分の理由説明の義務も法律によって課せられているわけではありません。これでは、外国人の側からみれば、入管の手続きは著しく不透明で恣意的なものとして映るのは当然です。

彼ら彼女らが送還を拒むのは、ただ単に自らの主張が認められなかったからではなく、主張が認められなかったその理由や判断プロセスの不透明さに不満を持っているからこそであって、このような行政の不透明さを解消することなしに、単に罰則等を設けても送還忌避、長期収容問題の根本的な解決には全くつながらないことは明白です。さらには、送還拒否者等に「犯罪者」のレッテルを貼ることによって、当該人を支援する個人や団体への不当な圧力につながることも懸念されます。このように、罰則等の創設はあくまでも行政の透明化が前提となってはじめて検討されるべきもので、かつ、最終的なものであると考えます。

一方、本提言の冒頭で、手続保障の観点から、在留特別許可の活用と考慮要素や基準の明確化の検討、退去強制令書発付後に新たな事情が生じた場合等の従前処分の変更を含めた適切な対応の検討が盛り込まれていることは非常に評価できます。ただ、それを実効性のあるものとするためには、まずは法を整備した上で行政の透明性をしっかりと確保し、そのうえで在留特別許可等を積極的に活用していくことが不可欠であると考えます。

 

2.第三者機関の関与を!

 行政の透明化を図るためには、行政の可視化、基準の明確化とともに行政に対するチェック機能の存在が不可欠です。しかし、現行制度では収容から送還まですべて単一の行政組織(入管庁)のみが関与し、司法及び第三者機関が入管庁の判断処分の妥当性等をチェックすることはありません。これは極めて不健全ですし、行政の専制化を招く危険性があります。

この点、本専門部会が「適正手続を保障する観点から,行政庁の判断の適正性について第三者によるチェックが機能するよう留意すること」と提言していることは大いに評価できます。この提言は再度の難民認定申請に関して盛り込まれているものですが、第三者によるチェック機能の必要性はこれに限らず、入管行政のあらゆる場面にも当てはまります。

また、収容や送還は人身の自由に密接に関連するものです。単一の行政組織のみの関与ではなく、複数の相互チェックによる慎重な運用が求められます。

 

3.全件収容主義の全面的見直しを!

本提言には、収容令書・退去強制令書の発付後から送還時まで収容することが原則とされる現在の制度(全件収容主義)を改め,仮放免とは別に新たな収容代替措置の導入を検討することが盛り込まれており注目されます。ただし、この収容代替措置を全件収容主義の例外として位置付けるのではなく、全件収容主義を廃した上で、収容自体を例外的措置として位置付ける必要があります。

 全件収容主義のもとでは、送還を受け入れない限り、収容を解かれるほとんど唯一の方法が仮放免です。しかし、その許否判断も行政による広範な裁量権のもとで決せられ、理由も示されず、極めて不透明でブラックボックス化しています。また、現行法上、外国人に退去義務は課せられておらず、退去させる義務を負っているのは国の方であるにもかかわらず、外国人が自ら帰国すると言い出すまでは収容が継続され、その結果、収容が長期間に及んでいるという現実があります。しかし、収容をし続けることで外国人を疲弊させ、音をあげさせ、自ら帰国すると言い出すことを待つことは到底人道的ではないし、収容の悪用以外のなにものでもありせん。そのようなことをなくすためにも、全件収容主義を基礎とした収容制度を全面的に見直し、原則的に収容を前提としない制度の構築が不可欠です。

 

4.人権の最大限の尊重を!

本提言では、心身の負担から離職する入管職員が少なくない現状を再検討する必要性が説かれています。職員の心身に負担を強いるような現行制度が健全であろうはずがありません。外国人の人権も入管職員の人権も共に最大限尊重されるための法整備が何よりも重要であると考えます。

 

以 上